患者様へ(一般の方へ)

新しい治療・新薬が誕生するまで

はじめに

病気を治すために、また、体の状態を良くしたり、それ以上悪くさせないために、医薬品を使ったり、手術、リハビリなどをして治療を行います。また、体の状態をチェックするために、血圧を測定したり、血液を調べたり、画像診断を行うこともあります。
この治療方法診断方法は、医師などが、「なぜ、この病気になるのか」、「この病気のよりよい治療方法はないか?」、「病状を測れるものさしはないか?」などを検討し、患者さまの生活の質を良くする方法をさがすために、試験(研究)を重ね、確立してきました。

この病気の状態が簡単にわかる検査はないかな。

今の治療方法が、あまり効いていないように感じる。他の薬を組み合わせた方が患者さまを楽にさせてあげられるかもしれない。

また、治療に使用される医薬品は、化学合成や、植物・土壌中の菌・海洋生物などから発見された物質の中から、誕生してきました

花から抽出したA成分は、新しい血圧の薬の候補になりそうだ。

効果の証明

新しい治療や新しい医薬品を生み出すには、“効果があること”を証明しなければいけません。“効果があること”を証明するために、試験をするのですが、この試験は人を対象に行わなければ、人に効果があるかわかりません。

B検査がこの病気の状態に関連しそうだ。この病気の人のB検査の結果がどうなるかを調べてみよう!

今の治療法にC薬を加えた場合と加えない場合とで効果に違いがあるかを 調べよう!

A成分を使うと、動物で血圧を下げる結果がでた。血圧を下げる以外、人間の健康を害するような結果は出ていない。人に使用しても、血圧下げる効果が期待できそうだ。

効果を証明する方法

今ある治療方法・医薬品、診断方法は、人に対して、“効果があることが期待される治療方法や医薬品” 、“病気の診断ができると期待される診断方法”を見つけ出し、人に対して試験を行い、証明してきました。効果の証明は、下記のような方法で行います。

  • いまの治療方法と新しい治療方法との効果を比較する
  • いまの治療方法のままの群と他の薬を加えた群を比較する
  • 検査結果の目標値をグループ別に設定し、どの目標値のグループの健康状態が一番良かったかを比べる
  • 同じ病気を持った群の検査結果の傾向を検索する   など

現在、たくさんの治療方法や医薬品が存在するのも、人に対して、いろいろな試験が行われ、効果が証明され、確立されてきたからなのです。これも、患者さまのご厚意による協力と研究者たちの努力の賜物なのです。患者さまの協力なくしては、よりよい治療方法を確立することが出来ません。もちろん、“効果が期待される方法”が“必ず効果がある”とは限りませんので、今目の前にいる“研究にご協力いただく方の人権”を優先して、これからのよりよい医療の発展のために試験を行います。

このように、病気の予防・診断・治療方法の改善や病気の原因の解明、患者さんの生活の質の向上を目的として行われる活動のことを臨床研究(人を対象とした医学系研究)といいます。また、新しい医薬品や医療機器の、国からの承認を得るために行われる、人を対象とした試験のことを特に「治験」といいます。人を対象とした医学系研究・治験を行うにあたっては、様々な決まりごとがあります。

治験・臨床試験・臨床研究の違い

  • 1)疫学研究:病気や健康に関する事象の頻度や分布を調査し、その要因を明らかにする科学研究
  • 2)病態調査:病気の背景や原因を調査し、病気の成り立ちを明らかにする調査研究

厚生労働省ホームページ 「治験について(一般の方へ)」を参照しました(http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/fukyu.html

人を対象とした試験を行うにあたっての決まり事

臨床研究は、「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」という国の指針に基づいて行われます。

厚生労働省ホームページ内「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」参照
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hokabunya/kenkyujigyou/i-kenkyu/#HID1_mid1

臨床研究はその計画(目的、方法(対象者や観察項目など)、結果の解析方法など)を立てることから始まります。研究はその計画・内容について倫理的・科学的な観点から倫理審査委員会という委員会で審査され、承認後、院長など研究機関の長の了承を得てから始められます。

研究の開始から終了まで

  1. 研究計画の立案

    Aの病気の人に、Bの薬を使ったとき、経過良好であれば、Bが効いたってことだ!それを証明するための、計画書を作成しよう!

  2. 倫理審査委員会での審査

  3. 倫理審査委員会での承認後、研究実施機関の長の承認後、研究が開始されます。
  4. 研究内容によっては、研究途中に生じた、重篤な事象(死亡、入院など)を倫理審査委員会に報告し、研究の継続の可否を審査されます。
  5. 研究終了後、研究結果をまとめ、よい治療方法などが証明されれば、論文投稿や学会発表などを通じて、新たな治療方法が世の中に広がります。

治験とは

「医薬品の候補」「医療機器」としての国の承認を得るための成績を集める臨床試験は、特に「治験」と呼ばれています。治験は、「医薬品の臨床試験の実施に関する基準」(Good Clinical Practice:GCP)という国の規制に基づいて行われます。治験はその計画・内容について倫理的・科学的な観点から治験審査委員会という委員会で審査され、承認後、病院長の了承を得てから始められます。

治験について、詳しくは厚生労働省のホームページに紹介されていますので、ご覧ください。
厚生労働省ホームページ 「治験について(一般の方へ)」
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/fukyu.html

治験の開始前段階から終了まで

  1. 基礎研究(2~3年)

    天然素材(植物・動物・鉱物など)からの抽出などから医薬品の候補となる化合物をつくり、その可能性を調べる研究です。
    医療機器の場合は、医療機関などの現場からのニーズにあわせ、現在ある機器の性能や利便性の改善、改良を検討し、試作品を作成します。

  2. 非臨床試験(3~5年)


    製薬会社研究者

    薬の候補Aは、動物に使用すると血圧が下がった。今までの薬よりもその効果が強い。有害な作用も出現していないようなので、人に対しても安全に使用できることが期待できるんじゃないか!

    医療機器の場合、試作品の機械試験や動物試験などの基礎試験により、目的とした性能を発揮するかの検証が行われます。医療機器の場合は、医薬品と違って、すべての製品について臨床試験が必要ではなく、この段階で、臨床応用について十分だと判断されるため、ほとんどの医療機器では臨床試験を行いません。

  3. 臨床試験(3~7年)・・・ここを「治験」といいます。

    非臨床試験を通過した「医薬品の候補」、「医療機器の候補」が、人にとって有効で安全なものかどうかを調べるのが治験です。治験は3段階に分かれていて、病院などの医療機関で、あらかじめ同意を得た健康な人や患者さんを対象に繰り返し試験をおこない、データを収集して、将来、医薬品となりうるか、医療機器となりうるか判断します。

    • 第一段階
      少数の健康な男性
    • 第二段階
      少数の新しい薬の治療対象となる患者
    • 第三段階
      新しい薬の治療対象となるより多くの患者

    ★治験を実施する前に、治験審査委員会で治験実施の可否を判定するための審査が行われます。

  4. 治験審査委員会での審査

  5. 治験審査委員会での承認後、治験が開始されます。
  6. 承認申請と審査(1~2年)

    治験で得られた結果が厳しく審査され、厚生労働省に承認されれば、「医薬品」、「医療機器」として発売されます。

さいごに

すべての医学的研究が今より良い方法を導くわけではありません。
今の治療方法では見られなかったよい結果がでることもあれば、今と変わらない経過をたどることもあり、中には、良くない結果となることもあります。
しかし、研究を重ね、新たな発見をしていくことで、医療は発展していきます。
医学的な研究について、医師やスタッフから説明を受けた場合、理解し、研究の参加について納得されましたら、ご自身で協力するかどうかを決めてください。
協力しない場合も、不利益を受けることは一切ありませんのでご安心ください。

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